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【第一部】3PLの物流ロボット活用の方向性


ロジザード株式会社

代表取締役社長

金澤茂則

「外部リソースを活用した企業物流」を構築し、企業の売上増大に結びつく物流改革を実現、数多くの実績を有す当該分野のエキスパートとして業界から高い評価を得る。



皆さま、こんにちは。ロジザード株式会社代表の金澤です。本日は「ロジザード物流セミナー2019年冬」に、たくさんの方にお集まりいただき、誠にありがとうございました。多数のお申し込みをいただき、ご来場をお断りせざるを得なかった方も多く、物流ロボットや物流の自動化・省力化への関心の高さを改めて認識いたしました。

 本日は私とともに、ギークプラスの佐藤社長と、すでに物流ロボットを活用し、倉庫の現場を運用されているアッカ・インターナショナルの加藤社長にご登壇いただき、実態と、皆様がこれから物流ロボットを導入される際に重要となる部分について、お話しいただきます。今回のセミナーがおそらく日本で初めて実践的な情報をお伝えできる場になろうと思っておりますので、どうぞ期待していただきたいと思います。私からは物流ロボットにはどのようなものがあるのかといった点から、全般的なイントロダクションについてお話をさせていただきます。私の基本的な情報をもとに、続きますディスカッションで、さらに理解が深まるよう進めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。



運送業界・配送業界の現状

 現在の状況が継続していくと、2030年までに物流作業従事者は数十万人規模で不足すると予測されています。日本の職業別統計分類では、倉庫作業者は「運搬・清掃・包装等従事者」に含まれているため、残念ながら、あまりに作業内容が異なるこれらの従事者のどちらがどのくらい足りなくなるのかという点につきましては、いろいろ調べてみましたが分かりませんでした。止むを得ず今回はこれらの2つの従事者を含めてお話を進めていきます。




 2030年には608万人の労働需要に対し、供給は518万人程度で約90万人の不足が予測されています。ちなみに、配送分野の輸送・機会運転従事者は約22万人不足するといわれています。人手不足になるとどういうことが起こるか、すでに皆さまも実感されてきているとは思いますが、その実態は予断の許さないところまできているのではないでしょうか。物流作業者の賃金は、この3年間で10%以上も上昇しています。しかし、それでも充足感は高まっていません。現在の首都圏の募集賃金は平均約1,100円ですが、先ほどアッカ・インターナショナルの加藤社長にお伺いしたところでは、採りやすい地域とそうでない地域があり、採りづらい地域ではプラス100~200円が募集のスタートラインだろうということでした。今後も賃金の上昇が伴うことが想定され、この状態をいつまで保てるのかといった点も非常に不安な要素です。

 人手不足は倉庫作業者だけの問題ではなく、運送・配送ドライバーも圧倒的に不足しています。「人手不足の副作用」と示しましたが、運送業界・配送業界は値上げという方向に一斉に動きました。ヤマト運輸さんは2018年3月、配送単価をぐっと上げたことで、業績改善が進んでいます。しかし、われわれ倉庫の運営側からすると、物流倉庫の運営は賃金と配送料のダブルパンチで圧迫にさらされることになり、今後も対応策を取っていく必要があります。

 こうした人手不足は国を挙げて解消への取り組みを進めています。先に示しました予測値では、2030年には約644万人の労働力が不足するとされ、その解消策として4案提示されました。




1つ目は「働く女性を増やす」ということで、介護や保育等の問題を解消することにより、女性の労働力を確保していこうというものです。

2つ目は「働くシニアを増やす」ことで、一旦リタイアされたシニア層にもう一度働く機会を提供し、人手不足を解消していこうという案です。

3つ目には、昨年改正された入管法により、「働く外国人労働者を増やす」という動きが追加されました。しかし、近い将来において、これらの策を講じたとしても、約298万人の労働力が不足するといわれています。単純な人を手当てする施策を続けていったところで、将来的には人が足りない状況は解消されないということです。

 そこで4つ目の方策として、「生産性を上げる」ことが提言されました。私たち物流倉庫内での作業を行う業界から見ていきますと、働く女性を増やす、シニアを増やす、外国人労働者を増やすという対策をとったとしても、必ずフィジカルな作業がついてまわります。単純に人を増やすだけではなく、同時に作業負荷軽減のための方策も必要であり、現状のままでは事業継続の危機が発生する可能性があることを真摯に捉えていきたいと思います。当然、人材の登用は進めていかなくてはなりませんが、将来に備えるための選択肢の必要性を感じますし、今回ご提案するロボットの活用により、業界の人手不足解消への貢献をしたいと考えています。


生産性向上のための対策

 生産性向上のための対策としては、機械化の推進であり、ここが本日のテーマです。各物流会社さんの作業単価を軒並み1.5倍にすれば一挙解決ですが、お客さまとより良い関係を築くためには、やはり生産性を上げる技術への取り込みが必要になってくると思います。実は、倉庫内作業は機械化に大変適しています。事実、バブル期を少し遡った時代には機械化への投資が非常に盛んでした。しかし、波があり、デフレ期が続いた時期には機械化への投資を行うより人を集める方が容易だったことに加え、大量のロットをこなす物流から、少量小口へと物流環境の変化があり、細かい作業が要求されるようになりました。つまり、機械で大きく物を動かすより、人の力を動かす方が効率の良い時代だったのです。

 しかし、そもそも倉庫内作業は、配送業務とは異なり、機械化に非常に向いています。1つは同じサービス業とはいえ、接客というエモーショナルな機能を必要としていない点です。私も一切笑顔がない倉庫を想定しているわけではありませんが、一般のお客さまに対しての接客の技術は必要ではありません。また、もう1つは、物流作業は非常にフィジカルな単純業務の集合体で運用されていくという側面があり、機械を導入し、機械に任せる部分を作ることが容易です。これが配送のいわゆる自動運転となると、相当なレベルで技術アップをしないと、なかなか一気に移行することは難しいのですが、私どもの倉庫作業に関しては、あらゆるバリエーションを含め、機械化をしやすい環境といえます。

 ただ、これまでの機械化は自動倉庫に代表されるような非常に大きな計画と投資を必要とするもので、導入の制約と投資リスクも同様に非常に大きいものでした。


ロボティクス

そこで、近年登場したのがロボティクスという技術です。私はロボティクスは人間と自動倉庫という対極の中間に位置する技術だと捉えています。先ほどお話ししたバブル期以前のころの機械化への投資とはまったく性格の異なる時代がやってきたところが1つの大きなポイントですし、私どもにとっては機械化するチャンスが巡ってきたということだと考えています。

 人の場合、身体能力の範囲で何でもできるというメリットがありますが、デメリットとしては、その身体能力以上に働くことはできません。また、労務管理という面倒な側面もありますし、個体差によって生産力がばらつくデメリットもあります。また、当然、人は体の具合が悪ければパフォーマンスが落ちますし、恋人との別れがあれば、前向きな気持ちになれないといったことが起きます。かたや自動倉庫は、決められた業務は人の1,000倍もの能力を発揮しますが、デメリットとしては、導入は建築と同等となり、高額になることです。アンカーを打つような大規模な設備は場所に縛られ、移転がしづらいということもあり、投資に対し大変な計画や見通しがないと導入できない側面があります。さらに、用途の転用が極めて難しく柔軟性に欠けます。

 さて、これらの中間に位置するロボティクスは、決められた業務では人の3~4倍働きます。本日のお話では7倍という数字も出ました。また、物量に合わせた拡張と縮小が非常に容易だという特徴もあります。さらには標準業務であれば転用が可能というメリットがあります。ただ、もともと自動倉庫自体が無人化を目指していた経緯からすると、このロボティクスはまさしくその中間であり、完全な無人化は難しいという課題があります。ここが本日の重要なポイントに1つとなりますので、頭に入れておいてください。


機械化のための計画と設計



 続いて、機械化のための計画と設計についてお話しします。「基本は、基準の能力を算出し、コスト分析を行いつつ導入する」という点については、皆さまもイメージされているのではないかと思います。基本的な考え方としては、単位あたりのコストを、労務単位あたりのコストと比較してゼロ以下であれば、これが1つの導入の目安になります。しかも、ロボットの有用なところは、量と時間に反比例して単位コストが下がること。ここが最も重要な点です。機械の場合、量と稼働時間が伸びれば伸びるほどコストが下がっていく効果が出ますが、人の場合は、量と稼働時間が増えるごとに単位コストが上昇しますから、機械のようなコストダウンは成立しません。

 では、どんなロボットを導入するべきでしょうか。私はロボティクス、特にAGV系やアーム系に関し、現状、導入と運用がより進んでいるのは中国で、「中国製造2025」という国策に伴い、大変な勢いでロボットへの投資が進んでいます。資金の潤沢な会社がロボットを次々と開発していて、私は中国全土を飛び回り、約30社のロボティクスメーカーを見学し、実態的にどのような活用方法があるのか学んでいる最中です。

 ロボットのテクノロジーは、人の手足を代替することに集中した機能で開発されているものが主流です。1つはAGVのような搬送系で、物を運搬する人の足を代替するものです。搬送系に関しては実用に耐えうる製品が続々と登場しています。ただ、会社によって濃淡があり、私が見学した中に世界ロボットサッカー選手権の1位の会社がありました。その会社はセンサー技術に優れ、反復横跳びのような素早い動きが得意なロボットを開発しています。また、技術はあるが、どういった分野で活用すべきか分からないという会社もあれば、今回ご登壇いただくギークプラスさんのように、すでに物流分野に特化し、運用までのノウハウを得ている会社もあります。もう1つはハンドリング系という手を代替するロボットの技術です。現段階では製造業の組み立て部門での活用が大部分を占め、物流倉庫内の常に変化するマテリアルのピックができるところまでいっているメーカーさんはまったくありませんでした。ちなみに、AI技術や画像処理といった認識技術は飛躍的に向上し続けていますが、やはり動作の制御に課題が残っており、現段階では限定された用途での運用にとどまっています。



 ロボティクスの運用には、独立型と協働型の2タイプがあります。これらのどちらを採用するかという点も重要なポイントです。独立型は、ロボットのみで完結運用が可能で、機械の性能をフルに発揮することができます。しかも、保管効率がかなり上昇するといった効果も見込まれます。しかし、これまでの現場運用を想定していると驚くほどの現場の変更が求められます。また、人の立ち入りを制限する区域が発生するため、最初の設計段階が大変重要なポイントとなります。協働型は無軌道型ともいい、スラム方式と呼ばれています。こちらは人の作業をアシストするロボットの活用です。保管効率の変化は小さいものの、既存の運用を大きく変えることなく導入できるので、ハードルとしては低いものとなります。

 現場構築にロボットを活用すると、どのような現場になるのでしょうか。これまでの私の見聞の上では、ロボット+コンベアを基本とし、現場を設計していくことが主流になるだろうと思います。現在は規模に合わせ、柔軟に拡張・縮小を行う運用が中心かと思いますが、さらにロボットに任せる単純作業と次の工程をコンベアでつなぐ方式が最終形になるのではないかと考えています。アリババさんなどは1日あたり約30万件の出荷オーダーをこなしていますが、すべてこのような運用が行われています。その結果、実際に働く人員は約30人です。将来的に私たちも、このような現場を目指していくことになると考えています。

 「独立型搬送ロボット」が目指すことは、保管効率を上昇させ、新たなスペースの活用と運用改革です。大きなストレージのスペースの中に移動棚を設置し、ロボットが稼働します。ステーションからそれぞれの作業が完了し、次の工程へ運ばれるというのが主な使い方です。人に追従するロボットは大きなレイアウト変更が不要です。入荷・出荷のエリアを作りつつ、最終的には仕分けや検品等を人が代替していくようなかたちで運用されていくことになるでしょう。

 「ロボットストレージ」は、おそらく皆さまの中でご存じの方はあまり居ないのではないかと思います。円形の棚に囲まれた中で、中央に設置されたアームで物を取り出すロボットです。アームは棚から商品をピックし、下のレーンに戻っていきます。作業者は原則1エリアにつき1人のみといったようなことが実現できているそうです。ストレージは保管棚として使用しているのだと思いましたが、実態はどちらかというと仕分けの要素が強いそうで、こちらは私たちの目指すロボティクスとは少し距離がありそうです。

 これらの基本的な要素をご紹介したところで、ギークプラスの佐藤社長と、すでに具体的な運用を行っているアッカ・インターナショナルの加藤社長から、余すところなく情報を披露していただくお約束をしていますので、ご登壇をお願いしたいと思います。まずは、ロボティクスの活用に取り組まれている生の情報をお伝えし、ロボティクス導入における重要なステップポイントについて、お話しいただきます。おそらく皆さま、どこかがモヤッとして解消されていないところがあるかと思いますので、たくさん質問していただき、導入・運用に向けてご検討いただけたらと思います。また、ロボティクスの導入により、新しい企業に生まれ変わる「3PL」企業の未来図をご提示いたします。以上で、私からのお話は終了いたします。ご静聴どうもありがとうございました。



ロジザード株式会社  社長  金澤茂則
ロジザード株式会社 社長 金澤茂則

「外部リソースを活用した企業物流」を構築し、企業の売上増大に結びつく物流改革を実現、数多くの実績を有す当該分野のエキスパートとして業界から高い評価を得る。