
ネット通販(EC事業)とバックオフィス(EC物流)~失敗しないC事業を構築する為に~
株式会社ヒューマニアインターナショナル
代表取締役 善里 威史
売上拡大、在庫一元管理、CMSの導入によるRPA促進と効率化、倉庫管理システムとの業務構築などEC事業の基礎に精通。自社のEC事業の育成とEC物流・ソリューション事業支援を両輪として活動。
2004年 WEB制作/デザイン会社設立
ECサイト構築と最適化、プロモーション立案に従事
2005年 株式会社ヒューマニアインターナショナルにてEC通販を立上げ
楽天市場をはじめECモールへの多店舗出店
2016年 株式会社ニュ―ウェイ(物流3PL)にてEC物流・ソリューション事業立上げ
「販売~デリバリー~店舗評価」までのEC事業全般の支援を受託
2018年 株式会社ヒューマニアインターナショナル代表取締役に就任
楽天市場におけるネイションズ講師に選任
目次[非表示]
- 1.バイイングセレクトを全国に展開する株式会社ヒューマニアインターナショナル
- 2.WEB制作、サイトやプロモーションのディレクション、代行業務やコンサルティングへ事業を拡大
- 3.バックヤードを大切にしないとEC事業は成功しない
- 4.“今”のECを生き抜くために知るべき時代の流れ
- 5.EC市場規模は9.2兆円まで拡大
- 6.EC事業で成功するための重要な「5か条」
- 6.1.フロントで必要な「5カ条」
- 6.2.バックヤードで必要な「5カ条」
- 7.自社の商品のメリットを最大化、新規顧客獲得にECは不可欠な存在
- 8.バックヤード作業の効率化が売り上げに直結する
- 9.バックヤードの改善で財務処理や配送もスピーディーに
- 10.まとめ
バイイングセレクトを全国に展開する株式会社ヒューマニアインターナショナル
バイイングセレクト「リッカティル(lycka till)」をEC/実店舗で展開しております、株式会社ヒューマニアインターナショナルの代表取締役、善里と申します。本日はその中でもECにおける物流を中心にしたバックオフィスのお話もできればと思っております。今ECはどのような事業背景で、なぜ今物流・バックヤードが重要になるのか、という点がセミナーの趣旨ですので、そこにフォーカスしてお話させていただきます。
どのようなことをしたらお客様に喜ばれるのか、日々悩みながらも運営している点やコンサルティングとして総合的にお客様へアドバイスをさせていただいておりますし、私自身が実際に店舗を運営している、まさに実践者であります。その経験から本日のお話が少しでも皆様の今後のお役にたてれば幸いです。
WEB制作、サイトやプロモーションのディレクション、代行業務やコンサルティングへ事業を拡大
まず、簡単に自己紹介をさせていただきます。ECの事業に携わったのは1999年の秋からで、2000年頃に販売にも携わらせていただいております。当時はケータイもガラケーしかない時代でしたが、雑貨を販売するチームに加わっておりました。そのときは「ガラケーではたして物が売れるのか」と、まだまだそのように言われていた時代、Eコマースはもちろん、スマートフォンも浸透していない時代でしたが、明らかにECで商品が流通するという手ごたえを得て驚きました。その後「事業」と言う形で、2005年に株式会社ヒューマニアインターナショナルが創業、EC部門を責任者として立ち上げます。創業当時は、事業計画や戦略立案だけではなく、撮影、トリミング、商品ページの作成、メルマガの発行、送り状の作成、発送と、すべての業務に携わり日々改善に取り組みました。
売り上げを伸ばしていき、創業から9年ほど経った2014年に、ECソリューションを提供するようになりました。これは、この9年間我々が培ってきた経験を活かし、お客様にアドバイス、システム運用や運営代行のご支援/ご相談を受けさせていただく事業でございます。こまかい内容としましてはWEB制作、サイトやプロモーションのディレクション、代行業務として受注処理や業界で「ささげ」を行っております。(※「ささげ」とは、撮影、サイズ採寸、原稿入稿の頭文字を取った言葉。)
バックヤードを大切にしないとEC事業は成功しない
本日はまさにバックヤードのお話ですが、実はソリューションとしてEC支援をしていますと、さまざまな企業様の課題を伺います。例えば、システム、物流などのバックヤードが上手くいかない、業務量が増えすぎてしまっている、というお言葉をよく耳にします。その理由として、バックヤードの重要性といのは事業を立ち上げた段階ですと、フロントに注力してしまい、その重要性に気づかない、という点が挙げられます。出荷が増えて改めて気づくという事もしばしばです。なぜバックヤードを検討しないと事業に失敗しやすいのか、という点もECのこれからの流れを実際に皆様に体感していただく形でご紹介しながら、バックヤードの重要性についてお話させていただきたいと思います。
“今”のECを生き抜くために知るべき時代の流れ
まず、今ECはどのような時代なのか、という点からお話させていただきます。事業を始める、もしくは実践する中でのECの事業としての捉え方や悩みは、立ち上げる年、時代、事業の育成状態、これから何をしようとしているのか、で異なってきます。物販を中心にお話させていただければ、今から7、8年前、ページを作って掲載すればよく売れた時代もありましたが、今はただ作っただけでは売れない時代になってきております。
販売が難しくなった理由は、競合が増えたからです。生き残るためには、必ず競合の存在を認識しながら、自社のコンテンツ、サイトの特性やマーケットでの立ち位置、ストロングポイントとウィークポイントを知ることが大切です。難しい=狙いや戦略が求められ競争が激しいという事です。
さらに考えておきたいことは、通信技術やモバイル事業者の変化により今まで10年、20年で起きていた変化がこの先は1、2年で起きるとも言われています。ECにおいても、変化の速度が増すと同時にお客様との接点が変化していきます。マーケティングの考え方も同様です。私も楽天市場さんに出店して15年です、(大変お世話になっていますが、)今は以前に比べ緻密に広告戦略を練る必要も痛感しますし、変化と競争の激しさを実感しています。そして、モバイルを中心にした考え方へのシフトは絶対です。ガラケーの時代では、ガラケーのアクセスや流通は2~3割程度まででしたが、スマホにとって代わってからは7割まで増えています。
このように変化に対応することがECのミソとなってきます。ユーザーが何をプラットフォームとして見て、何を軸にネットとつながっているのか。メッセンジャーも見逃せません。たとえば昔はのネットプラットフォームといえばyahooなどでしたが、今はSNSもあります、メッセンジャーもそのプラットフォームになり得る時代です。情報を得る場も変わってきています。これにリンクして、一例としては、かつてはユーザーを囲い込み、そこにメルマガなどを発信する事を考えてきました。しかし、今は情報というものは外で取り扱われるものに変化していますので、リーチの方法やコンテンツへの呼び込み方も多岐にわたり、ユーザーとの接点の考え方、プラットフォームそのものへの意識が変化しています。
EC事業を行う我々は変化に敏感になり、対応すること、チャレンジすることが大切な時代だと考えています。
EC市場規模は9.2兆円まで拡大
現在のEC市場規模は、9.2兆円、成長率は、8.1%となっています。ちょっと少ないと感じられると思います。ECのチャネルが多様化したこともありますが、規模はもちろん、その成長率も低いなと感じてはいないでしょうか。その原因の1つは、バックヤードの整備(システム化)が追い付かず、企業がまだまだやりきれていないという点が挙げられます。これは言い換えると、より売上分母の大きな業界や業態でIT化が遅れていることが言えます。またメルカリに代表されるC2Cの市場も非常に拡大していることも、消費者の動向として着目しておきたい点です。つまりまだまだチャンスの大きい市場であり、スピードを上げて取り組んでいきたいと考えます。
EC事業で成功するための重要な「5か条」
ここでこれから事業を検討する方も多いのではないかと思いますが、EC事業で重要な5か条、キーワードをフロントとバックヤードで分けてお伝えさせていただきます。
フロントで必要な「5カ条」
さて、フロントの5カ条の1つ目は、ディレクションと制作です。方向性を決めて売り上げを取ることです。バックヤードで重要なのは、取った売り上げに対し指示を出して出荷し、お客様の対応を行うことです。
1つ目は、商品です。コンテンツとサービスを指します。コンテンツあってのサイトですので、自社の商品の強み、差別化のポイントを理解することは当たり前のことですが必須です。
そして2つ目のポイントですが、その商品やコンテンツはお客様があってこその商品とコンテンツであり、ECは物販であるという事です。注意して欲しいこととして、IT色が非常に強いECでは、カートベンダー様のシステムや販売管理、在庫管理など専門的に学ばなければならないことも多くなります。例えば、仮にメイクショップを運営するのであれば、メイクショップのシステムについても学ばなければなりません。つまり運営においてその部分に結構リソースを割く事になります。ECサイトを運営し始めてこの事に気が付くのですが、意外と事務作業やシステムなど、業務フローに時間が掛かります。しかし、原理原則ですので、商品をいつも見てこだわって欲しいと考えています。EC、Eコマースがその名の通りカタカナや横文字で話されますので、IT、システムという(もちろんそこが重要なのですが)側面にとらわれてしまいがちです。基本は接客であり物販です。商品があり、その先にお客様がいることを改めて大切に考えて臨むことが大事なのではと思っております。
3つ目は、競合の存在です。敵を知ることは非常に大切です。自分たちの質をどこまで高めなければいけないのか、システムは何を使うべきなのか、どういうところにプロモーションを掛けて露出をしなければならないのか、という点はなどは、実は競合を知ることで初めて有意な選択を行うことが出来るケースも多くあります。
よく、売り上げが上がらない、という相談をいただきます。私はこのようなとき、ご相談いただいた方の商品やサービス、システムをくまなく拝見しますが、同時に、競合もくまなくチェックします。競合を知らないと本当の課題が見えないからです。競合は必ずと言ってよいほど存在しますので、ベンチマークしウォッチしながら自社のコンテンツを磨き、販売して欲しいと思います。
4つ目は、集客です。集客こそはプロになって欲しい部分です。マーケティングとプロモーションは、これが簡単にできるのがモールと、そうではない独自ドメイン(自社サイト)では求められるものや考え方、必要な経験も異なります。モールは店前通行量の多い店舗を出店するイメージです。プロモーションもモールへの広告など駆使することで、集客につなげることが可能だと思います。これと異なり、独自ドメインでは集客が課題になります。何も看板のない原っぱにお店ぽつんと出すイメージです。当然導線として道を作り、看板を立て、メディアなどをフルに活用して集客していきます。自社が持っているブランドの知名度なども独自ドメインの出店には欲しい要素です。自社サイトのECで多くの企業の担当者が苦労し、場合によっては心が折れるのは、必ず集客の問題です。その重要な集客ですが、いずれにしても集客にはある程度ノウハウだけでなく、コストもかかります。当然CPOや費用対効果は問われるコストとなりますので、その点も含めポイントの1つであるとご理解いただければと思います。
最後が、CVRです。コンバージョンレート(転換率)という意味です。ECの売り上げというのは、「アクセスユーザー数×コンバージョンレート×客単価」です。コンバージョンレートというのは商品ページの詳細など、信頼性がないとなかなか高い数字を出ません。正しいかはわかりませんが、おそらく私の経験上、コンバージョンレートは平均は3~4%です。お客様が100人いれば3~4人ということになります。リアル店舗であれば多くのケースでこのような数字ではないはずです。ECでは店舗に入店するお客様と異なり、やはりそこはバーチャルの力不足でもある部分ですが、売っている商品ページには興味のない方でも集客できますし、クロールしてくるユーザーの中には最適化が難しいユーザーももちろんいます。この最適化とよく言う部分は非常に重要なキーワードで、左記の集客の部分で費用対効果に触れましたが、本当に購買に紐づかないユーザーもプロモーションコストを掛けて引っ張ってきてしまっている、ということもあります。そのような実状はさておき、最後に掲げたCVRが大切である理由ですが(つまり買って頂くためには)、どれだけ魅力的な商品ページ(サイト)を作れるか、という点が非常に大きいことを覚えておいていただければと思います。
例えば私も楽天市場に出店していますが、購入する方の8割が商品ページからご購入いただいています。以外と皆様、トップページからの流入が多いと思われています。物販の場合、お客様は商品を探していますので商品から来て、トップページに来て、納得をしたら購入する流れの方が多くなっています。もちろん、その前に同じ商品の比較を行うなど細かく見てから購入していますので、コンバージョンレートと集客の関連性についても覚えていただけたらと思います。なによりも商品ページのプレゼンテーション力が売上を左右する、だからページを作る力は当然問われると考えてください。
私ももともとフロントの人間ですので経験があるのですが、このフロントの内容はぜひ自社で知見を広げていっていただきたいと考えております。もちろん外注の方と連携していくことも行って構いませんが、良し悪しや集客の属性、この集客方法で最適化できるのか、という点は、自分たちで経験する事が大切です。是非、特に「ディレクション」するポジションの方を自社で育成していただきたいと思います。ここが、自社でEコマースを成功させ、長続きさせるポイントになると考えています。
バックヤードで必要な「5カ条」
では、次5カ条バックヤード編に入ります。
まず1つ目は配送です。早いに越したことはないですが、何でも無料という時代は終わっていまして、サービスには対価が発生するということを考えておくべきだと思います。また、ヤマト運輸や佐川急便もこのほど大きな値上げをしましたが、配送に関する課題はすべて解決されていませんので、まだまだ問題があると感じています。これから先は受け取りの方法などさまざまサービスが開発されており、Eコマース主流で動いていますので、かなりの課題が徐々に解決していくのではと思っております。無人配達機の開発が進み、大学のキャンパスで試運転などもされていますので、時間とともにどんどん状況が変化しています。基本的には、日付指定など含めサービスの質と費用のバランスが重要になりますので、競合のガイダンスなどとも比較して参考にして自社の配送サービスを考えてほしいと思います。
2つ目は、運賃です。配送料は先に述べましたサービスとのバランスが非常に大事で、同じ金額でも高いと思われたり、安いと思われたりします。梱包の問題やサイト自体の構築もしっかり考えていただきたいと思います。
3つ目は、梱包です。お客様とリアルに接点を持つ部分になるからこを重要です。特に同梱物にも注目していただければと思います。通常であれば自社の商品を梱包し、送り状を貼り付けて入れて送るのがスタンダードですが、中にチラシやサービスの案内を入れたり手書きのメッセージを入れるところまで行います。梱包とは、お客様との接点を左右し、お客様の期待を上回ったり下回ったりすることがあることを知って欲しいと思います。そしてそれがお店の評価に繋がるという事を感じてください。送るという行為自体は売り上げにはなりませんので、スルーされることなのですが、ここ1年、2年梱包の重要性が非常に高まっており、トップを走るECサイトでは、同梱物にも気を配り、また届いた後に意見を聞くメールを送るなど、売った後の顧客接点をとても大切にしています。
4つ目は、在庫です。在庫と闘わなければいけないのは物販の宿命です。ECサイトを1つ運営しているときは良くても、自社サイトもあればyahooも楽天もある、複数店舗出店するケースでは在庫をいかに上手く活用するか、システムの中でどのように管理するか、企業にとって在庫は資産にもなりますので、的確に計上する必要も出てきます。一元管理など最適な管理を行い、無駄なことをしないという点が大切です。基本的にEコマースもSKU(最小管理単位)で管理をしていますので、SKUを前提にシステムフローを考え、在庫管理をしっかり考えていただきたいと思います。在庫がいつも合っていない、という相談も多いので、ここは機会ロスや売り越しによる人件費の浪費などを避ける為にも重要なポイントしていお考え頂ければと思います。
最後は、システムです。1~4すべてに言えることなのですが、「隅々まで効率化」を考えていただきたいですし、システムは沢山あると同時に得手不得手や特徴もそれぞれにありますので、自分たちの会社、事業の考え方が具現化できるものを選んでいただきたいと思います。私がECの事業を始めた当初はシステムも優れておらず、すぐ聞ける方も少ない状況でしたが、自分たちがやりたいことを具現化するシステムとなると、しっかり考えなければなりません。可能であればより多くのシステムで運用を経験できれば良いのですが、そうもいかないと思いますので、システム会社様と座組みを持ってヒヤリングしながら突き詰めていけば良いシステムに出会えるはずです。選んだシステムで可能背や運用に関るコスト、事業の方向性も変化しますので、しっかり考えて歩みたい部分です。
今まで私もECの販売管理のシステムは3回変えていますが、都度より良いもの、やりたいことが具現化出来るものに変更してきました。最初はシステムによる管理を行わずエクセルを駆使して自分たちで行ったところから始まりましたし、在庫管理システムを入れて失敗したなど、いろいろな経験もしてきました。ただシステムを変える都度、我々も賢くなっていると思います。より多くの事や可能性を考えられるようになりました。システムは事業や売り上げの規模に関わらず最初から備えておいた方が良いと思いますし、なかなか良いシステムが何か選別出来ない場合は私のような者やシステム会社様などに聞けばかならず結論が出せるはずです。
自社の商品のメリットを最大化、新規顧客獲得にECは不可欠な存在
さて、ここで皆様にとってECがなぜ必要なのか、もう一度考えていただければと思います。今まで獲得できなかった顧客を取り、自社の商品やサービスのメリットを最大化するためには、やはりECが不可欠ではないでしょうか。なぜバックオフィスやシステム、物流の健全化が大切であるかをお話させていただきます。バックオフィスやシステム、物流の健全化を行うにあたり、重要なキーワードを一つ一つ皆さんと考えていきたいと思います。
集客の回収に役立つUX、LTVの活用方法
UXとは、ユーザーエクスペリエンスのことを指し、ユーザーの購買体験を指します。例えば全く同じ物を買っても発送料が安い、高い、着くのが早い、遅いなど、顧客は色んなことを感じながら購買体験をしています。買ってどうだったかというユーザーレビューに対してもうECは逃げることはできません。むしろこれにこだわるべきなのですが、つまり、購入した経験にはそれぞれ差がある、お店には差があるということを事実の1つ目としてお伝えしたいと思います。
続いて、2つ目のキーワードはLTV(顧客生涯価値)です。今どのビジネスでも重要視されている大事な役割を持っています。もちろんUXがLTVを左右します。LTVによって投資の回収に対する考え方も変えていきます。
集客は購買体験と顧客生涯価値に紐づいている
お客様が商品を購入する際に知るという行動があります。これが集客のミソで、フロントの部分は話すと長くなりますので今回は話しませんが、知るという部分が大切になってきます。次に、調べるとう行動をします。次に買う、なのですが、買ったあとの「語る」に注目してください。例えばAmazonの商品ページを見ると、星マークが並んでいますよ。Amazonの担当者の方も、星マークが高くないと売れませんよ、と重要視されています。これが「語る」です。店舗のレビューも同じです。
楽天やyahooであれば店舗のレビューがあります。実は店舗評価によって、それぞれのサーチに商品がヒットするかどうか、そのアルゴリズムにも反映されていると言われています。そのため、バックヤードが左右するお客様の体験が非常に重要だと言えます。安い商品があって配送も無料だったとしても評価が低ければリピートしない、もしくは、1点しか購入しません。このECサイトにはできるだけお金を使いたくないと思われてしまうと、利益が回収しにくくなってしまいます。そうではなくて、このサイト見てみたい、期待値がある、対応が丁寧、信用できるとなると、コンバージョンも変わってきます。売って終わりではなく、売った後のことも考えることが大切で、これが先程申し上げたUXとLTV、つまり購買体験と顧客生涯価値に紐づいていると考えていただければと思います。これは、私の経験上間違いない事です。
バックヤードを行うならCPOの知識がマスト
次に専門的な話になるのですが、CPOというのはCost Per Orderの略で、新規顧客を獲得するための指標のことを指します。具体的に申し上げますと、例えば1万円の商品を売っていたとして、購入いただいたお客様の頻度は平均約月2回だとします。年間にすると平均5回くらい、2年目は3回くらい、というデータが集まると、売り上げに自分たちの販売原価や粗利、コストなどを入れて、残る損益分岐点を出します。これにより1ユーザーを獲得する際にはプロモーション費をいくら掛けてよいか、という指標を立ててプロモーションを組、成否を判断するのです。
なぜあえてこのCPOもお話するのかと言いますと、このCPOは企業によって異なるからです。1回しか購入されていない、すぐ離脱してしまうなど、LTVが低い場合、回収できないためコストを掛けられません。そうなるとプロモーション費が掛けられないため、露出効果のある良いところに掛けられません。そうしますと、お客様の奪い合いが起こりやすくなります。私はよくCPOはどれくらいですか、と伺うことが多いのですが、(まず皆様答えられませんが)、内容を話すと、なるほど、と思っていただける指標でもあります。しっかり考えておくといかにプロモーションをして、どのように回収すれば良いかわかりますので、プロモーションへもスピードと合理性を持って取り組めるようになります。言葉だけで良いと思いますので、知っていただくと良いです。
そしてそのCPOは先程のUXとLTVにより異なるという事実、それがバックヤードの質によって左右されていることを覚えていただきたいと思います。お配りした資料に7:3と数字だけを謎かけのようにお見せしましたが、実はバックヤードに7、フロントに3、これくらいの比率でやらないとEコマースは上手くいかない、ということをお伝えしたかったからです。きっとバックヤードの重要性に対する意識は変わってくるはずです。
バックヤード作業の効率化が売り上げに直結する
続いて物流の話に入ります。Eコマースをしていると、どうしても集客に目がいきがちですので、集客の知識を増やそうとしてしまいます。ですが一時的に売上増えてもバックヤードのシステムが健全でないと維持できず、または伸長も鈍化することは左記のお話からもご理解いただけると思います。極端なお話としては、今年は売上を大きく伸ばしたが、翌年は同じことが出来ない、という事も起こり得ます。
次は細かいECの作業を具体化したものになります。1番上は販売プロモーションがあり、サイト構築、開店作業があります。これはフロント側の作業です。その下にデータ連携と書かれておりますが、ここからがバックヤードの作業になります。これは物販の業務量ですけれども、ちゃんと業務フローを書いて見るとこれだけ作業が複雑になっています。このように作業を具体化にして書いていくというのは骨が折れる作業になりますが、冒頭に申し上げた通り、ここが健全に回っていないと上位の売り上げを支えることができなくなってしまいます。サービスも成長しづらくなってしまいますので、バックヤードの設計をするところからデリバリーするところの構築は、7割の力を注いでいただきたいと思っており、ここでは業務フローも交えてご説明させていただきました。
バックヤードの改善で財務処理や配送もスピーディーに
これまで申し上げた通りバックオフィスで差がつく時代になりました。Eコマースは約8%しか成長していない、という話がありましたが、バックヤードのIT化と成長がこの数値にも大きく関係しているのではと考えております。私自身事業を始めた当初はシステムもなく在庫を抱え、精度を高める為にバタバタし、スタッフも日々仕事に追われていたことを覚えています。しかし、ソフトを入れたことによって改善し、同時に売り上げも上がっていったことを覚えています。
配送も早くなりますのでお客様からの店舗評価も上がりました。財務処理も楽になりより営業面に力を注げるようにもなります。こういったことがバックヤードでは起こっていると考えていただければと思います。では、よりリアルに事業を育成するならば、バックヤードに力点をおいてください。
一元管理でリアル店舗とECのコスト管理もスムーズに
O2Oやオムニチャンネルも、これを実現するためにはECと実店舗の在庫が互いに参照できる状態になっているシステムによるスキームが必要です。実際のDB(ディストリビューター)の方がより良いアクションを起こすためにもシステムが大切になってきます。もちろん活用できないシステムでは意味がありませんので、自分たちがやりたいことを具現化できるようなシステムを選ぶこともとても重要です。
その中でもECのリンクさせてお話するならば、キーワードとして「在庫一元管理」というのが大切なファクター、テーマとなっています。どれだけのチャネルを管理できるのかサービスによって異なりますし、ECではないリアル店舗の在庫とも将来的に必ず連携が必要だと思います。ECと店舗の在庫は別々の倉庫であったり、営業取り置き分は在庫を眠らせているであったり、期間センターはECのお客様からはなれた地方にあるなど、1社1社本当にさまざまな事情を抱えていらっしゃいます。それらをどこまでカバーできるのか、それともパッケージだが開発で何とかできるのか、様々な悩みや課題があることと推察しますが、システムは進化も早く必ず仕組みは作れますので、キーマンを集めて座組みを重ねてほしいと考えます。
また、CRMにも注目してください。今まで実店舗を拡大してやってきてECに参入した場合、実は顧客管理が別々だという企業もまだまだ多くいらっしゃると思います。新しいブランドを立ち上げてプロモーションを打つ場合、顧客管理が別々ですと、販促にはそれぞれに親和性がない場合がありますし、ブランドやお店としての最大の効果は出せません。せっかく一つのブランドとしてお客様に認知されているのにも関わらず、会員番号やアカウントが別にあるのは合理的ではないわけです。これを横断して管理することはキーになりますので、お客様の関連性をまとめて管理することが大切になります。と同時にお客様をより知る事、プロモーションに活かすことを考えねばなりません。
当然これからはECだけを考えるのでは限界ですし、オフラインとオンラインの関係を、ブランディングの「顧客接点」としてどのようにしていくかを考えていかねばなりません。また新規顧客の獲得をするシーンでは、潜在顧客であるリードへいかにリーチするのかといった戦略が必要です。
しかし今日お伝えしてきたことは、つまりこれらを実践する為の前提はバックヤードやシステムの健全な組み立てと運用であり、CRM、在庫一元管理や顧客一元管理の精度がお客様の購買体験をより良いものにとして支えることが出来るのかが、成否を左右しているという事実です。ここが、本日の私の話のいわばゴールでございます。
バックヤードは守りとして非常に重要ですけれども、実は守りだけでなくて、攻めと利益の回収というところにつながっている、ということをお伝えさせていただければと思います。
まとめ
最後におさらいなりますが、バックヤードが持っているスピード量、コスト量、CRMなどは実は販売力や信頼度、販売力を上げ、支え、大きく影響しています。UX、LTV、CPO,これらは利益アップに直結している、というのが本日のまとめでございます。これから事業を展開される方には聞き慣れない言葉も多かったと思いますが、自社の強みを把握、事業計画を立てていただければと思います。この話をどこか記憶に残していただければ幸いです。ぜひ、これからの事業の発展に活用していただければと願っております。また、弊社コーポレートサイトがリニューアルされましたので、ぜひご覧いただけると幸いです。