
LTVを上げるおもてなし物流とは?
株式会社スクロール360
常務取締役 ビジネス戦略室長
高山 隆司
1981年スクロール(旧社名ムトウ)入社以来、37年にわたり通販の実戦を経験。2008年には他社のネット通販企業をサポートするスクロール360の設立に参画、以後、200社を超えるネット通販企業の立ち上げから物流受託を総括。その経験を生かし2015年2月に「ネット通販は物流が決め手!」「シニア通販は『こだわりの大人女性』を狙いなさい」(ダイヤモンド社)を出版。
スクロール360の高山と申します。どうぞ宜しくお願いいたします。
トピックスとして、アジェンダノートというWeb媒体がありまして、こういったマーケティングの話が載っているのですが、私連載させていただいております。で、2回連続第1位になりまして、こちらは中国の物流について買いたのですが、Amazonさえつけいる意思がない、中国物流の最前線と実態、非常に写真もいっぱい入れて、中国のEコマースがこのような感じであると載せております。ちょうどこの日に日経新聞で、Amazon中国撤退という記事があったんですね。それで一躍注目を集めて1位になりました。
この後、ユニクロのレジ待ち行列を解消したRFIDタグというICタグがあります。ユニクロのレジで商品を置いただけで、金額が何でわかるんだろうと思われますが、実はこのタグのおかげなんです。通すだけでいくらかがすぐわかります。興味ある方はぜひアジェンダノートでランキングを見ていただいたらわかると思います。
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自己紹介
自己紹介をさせていただきます。38年前通販のムトウという会社に入社し、大阪営業所に配属になりました。通販って営業いらないのになぜ営業だったのかと申しますと、当時は通販かそこまでメジャーでなく、カタログを婦人会というところで回覧して注文を取っていたのですが、当時は婦人会の方に「写真では買えへんがな!もし変なもの届いたらどないすんねん!」と言われておりました。「もし気に入らないものが届いたら、私が返品を取りにまいります。通販というのは安心なんですよ。」と1軒1軒応えておりました。それが今から38年前の話です。この辺からセシールさんや千趣会さん、ニッセンさんがテレビCMをガンガンやり始めまして、この辺りから通販がメジャーになりました。それが1980年代です。そのあと1990年代に単品通販が出ました。先程の講演の中でもやずやさんやエバーライフさんなど定期購入をしていく販売方法が出てきました。
そのあと1997年に楽天がスタートし、2000年代になるとTVCMやEコマースが一気に伸びてきました。2010年にクロスメディアと言いまして、リアル店舗がEコマースをやり、さらにオムニチャンネルが出てきます。今ではOMOというオンライン・マージウィズ・オフラインといい、オンラインとオフラインの境界がなくなってきております。例えば、Paypayです。テレビでPaypayを知ってダウンロードし、リアルなお店で購入し、1000円当たってfacebookでシェアする、というようにリアルとバーチャルを何回も往復しています。
私が所属している総合通販なのですが、実際赤字で伸び悩んでおり、通販というものがどんどん変わっているのが実態で、流通業界の栄枯盛衰を体感してきました。私、いつも言うのですが、その時代に強い会社が生き残るのではないのです。環境に適合した会社が生き残るんです。ですから、総合通販のカタログで生き残っていた会社が今やそういう環境ではなくなっているのです。もう1つ私がお伝えするのが、現状維持は後退しているということです。なぜかといいますと、自分たちが維持している、止まっているということは周りが前に進んでいる、置いてかれるということです。いかに環境が変化しても対応していけるか、というのが問題になります。38年、通販一筋でやっております。
60年の通販ノウハウを持ち、M&Aにより世界に拡大を図るスクロール
実はスクロールは通販をもう60年やっております。現在の売上高でいいますと716億円です。スクロール360というのは、親会社スクロールの長年培ったノウハウ、コンタクトセンターや物流センターのいうインフラを使って他社の通販のお手伝いをしています。それは360度サポートすることをミッションとして行っております。3月の売り上げは、99億9800万までいかまして、100億は令和の時代まで取って置いた、という言い訳をしております。
今スクロールはM&AにつぐM&Aで22社になっております。日本だけでなく、ジャカルタやシンガポールにも支社がございます。なんの脈略もなくこう進んだわけでなく、きちんと戦略を持ってこう進んでいます。通販事業をこのように考えております。親会社が生活協同組合の通販、すなわちB2B2Cと呼ばれる会員限定の通販を行なっております。ここは、Eコマースの繊維業者です。ブランドバッグのアクセスという会社、釣具やキャンプ用品を扱っているナチュラムなどのように、カテゴリーで1番とされるEC企業に対しM&Aを行っています。
次に、健康食品と化粧品です。それが、豆腐の盛田屋、北海道アンソロポロジー、ナチュラピュリファイという会社が行なっております。
この通販のバックヤードをスクロール360のソリューションが請け負っている繋がりをしております。つまり、この会社も、商品の画像を撮影してサイズを測って、ライティングして楽天やAmazonにアップするという工程を全部ここで行なっております。注文が来たら注文データをもとに、すべてここで行います。集荷も代金回収もここで行います。つまり、ここの人たちは何もしなくても売り上げが上がっていく仕組みになっています。では、ここの人達は何をしているのかと申しますと、一番重要な商品の仕入れ、別のモールにさらに出店する、そういった販売戦略や商品戦略に特化して行い、日々のオペレーションはこちらで行う、という仕組みになっております。もはや総合通販ではないんです。複合型通販に移行していますので、環境の変化にいかに適合していくか、というのを実践している会社になります。
「通販 桶の理論」を活用しなければ、LTVは改善しない
1つ覚えていただきたい話があります。通販桶の理論、というものがありまして、昔はこのような木の桶で体を洗っておりました。木の桶は円周の木が揃っていないと水が溢れてしまいます。例えばこの一片だけでも半分しかなければ、水は半分しか入れられません。他が100点でもここが50点ですと、すべて50点になってしまう、というのが通販です。全部100点を取らないと100点にならないのです。商品企画が100点、プロモーションも100点、デザインもCMも受注システムもやっている。しかし物流が50点ですと、全体が50点になってしまうんです。
桶の高さを整えなければならないという点と、いくらLTV高めようとしてもこういったことができていないと、お客様が怒ってしまう、ということが起きてしまいます。
私どもが色んなお客様がいますので、ヒアリングする前に、どこのポジションかな、というのを確認します。この表で確かめた上で商談をしていきます。ここはリピート通販系のお客様です。ここがクロスメディアという話でテレビショッピングとEコマース、リアル店舗とECやっている、というのがここになります。
自社の知名度がすごく高くて自社でやっているところは、Amazon、アスクルになります。ここはモード系です。ここだけ天井が一番低く100億でなくなっています。これだけだと上に伸びないですよね。楽天に出店しているショップさんは4万店あるわけです。年商10億を超えているショップは約100社しかありません。4万分の100です。ここのメリットはメインと組み合わせたり、自社で店舗やったり、というのが実情だと思います。こことここの売り上げも全部違いますし、こことここも違います。システムもプロモーションもやり方も全部違います。
RFM分析でいつものDMを最大限に活かす方法
ネット通販といいながら、実はこんなに違うんです。
総合通販というはRFM分析というものをやります。データベースマーケティングなのですが、リーセンシーと呼び、お客様がどれだけ直帰せず買ってくれているか、フリークエンシーといい、どれだけ頻繁に買ってくれているか、それからマネタリスといい、どれだけ金額多く買ってくれているか、これを組み合わせしているのが総合通販の分析方法になります。
リピート通販はLTVというKPIを重視しています。1度買っていただいたお客様が1年間の中で注文、粗利をのこしてくれるか、という数値を見ています。リピート通販会社のLTVの期間は1年です。なんで1年かといいますと決算期は1年だからです。1年で回収できるかという判断でここを分析しています。いかに、リピートさせるかという点になります。
モール系、Eコマース系はROASが大切になります。広告運営を非常に重要視して運営しております。
RFM分析はなぜやるのかといいますと、この分析を開発したのはアメリカのシアーズローバックという会社でした。カタログを注文が来たお客様にどんどんDMしていきます。注文がない方もいますので赤字になってしまいます。どうしたかといいますと、注文をくれる人だけにDMしたいわけです。
分析しますと1年前に買った人より、先月買った人の方が買う確率が高く買っています。年に1回買う人よりも年に10回買う人の方が、注文確率が高いです。これは当たり前ですよね。1年間に3000円しか買ってくれない人よりも、3万円買ってくれた方が、注文確率が高いということで、組み合わせて指数を出して、お客様が買う確率が高い人から順番に並べていきます。全部で100万人のお客様がいらっしゃると、100万人全部にDM打ってしまうと結果は同じになるのですが、このRFN分析を行うと買う確率が高い方からカタログ売っていきますので、オーダー数が非常に高くなります。100部DMせずに50万部にすると、何も考えずに打った場合と比べ、ここまで注文が上がっています。黒字にさせるには、こういった分析が必要不可欠です。
先月買った人が、一番注文確率が高くなりますので、リピートオーダーをもらうには、できるだけ早く手を打つ必要があります。さらに、リピートオーダーしてくれた人が多いほど、翌月のオーダーも多くになります。翌年にもリピートは引っ張れる、という理念になります。ここをこうしていくと、通販のお客様の売り上げを上げていくことが可能です。
サービス設計の3つのポイントを見直し、リピート改善へ
どういう風にサービス設計をしていくか、という話なのですが、一流のシェフが一流の食材を使って提供するレストラン、流行るに決まっているだろうと思うと実はそうではないんですね。理由は分析することで見つけていきます。お客様と接するところを分解して見ていけばいいのです。
お客様がまず入店する、入ってきても挨拶がない無愛想な店員がいる。座って料理がでてきたけれどお皿やグラスが安っぽい。アンバランスな状態だったとします。さらに、注文と異なる料理がくる。通販でいうと誤送ですね。出るときに支払いがあっても見送りがない。料理は一流でもサービス設計が何もできていない、ということです。サービス設計でいうと、基本があります。
サービス設計の基本は、3つあるのですが、1つ目がMomet of truthです。直訳すると真実の瞬間です。決定的瞬間と訳します。サービスの鉄則としては、お客様と初めて接した瞬間、数秒間が重要といいます。なぜかというと、初めてとき人間はドキドキしています。このときの印象が強く残ります。例えば、皆様が富山へ初めて出張に行ったとします。タバコ屋さんでホテルの場所を伺ったら、わざわざお店の外まで出て次の角まで出てきて教えてくれたとします。富山の人は親切だな、と思うわけです。正確に言うなら、富山で初めて会った人が親切なわけです。初めての印象は強く残りますので、その瞬間を大切にすればよいのです。一流のホテルであれば、入ってきたお客様を何秒以内に接客する、と言う決まりがあります。
面白い例をご紹介しましょう。ママ友というがあると思うのですが、幼稚園に入ったときのママ友がずっと仲良くなる傾向があります。その後、小学校、中学校と続きますが、そこでのママ友はそこまで仲良くない場合が多いです。なぜかと言うと、幼稚園のときが一番ドキドキしており、一緒にいろんな活動を通して仲良くなる、という話があります。ほかにも、実験でも吊り橋効果、というものがありますよね。男性女性を吊り橋の反対側から橋の真ん中で会わせると非常に結婚確率が高くなると言う話があります。
基本の2つ目ですが、サービスレベルの統一もとても重要です。桶の話のように、一番低いものが顧客の評価になります。非常にデザインが良かったけれども、届いたひどい梱包で届いたとします。そうするとガッカリしますよね。ですので、サービスの統一が大切です。良いホテル、レストラン、居酒屋などは統一されていますよね。そのお店の雰囲気に合った食材やサービスがあって統一されています。それがブランドという話になります。
基本の3つ目は、ハロー効果、近接効果です。最後の印象が良いと話しやすくなるというものです。最後の印象が良くなければならないのです。銀座のママは必ず1階まで見送りに来てくれ、挨拶します。途中で他の店に行かないように、というのもあるのかもしれませんが、最後の印象を心掛けています。
物流でいうと、商品到着が重要です。まずは初めてリアルで接するわけですので、購入時のイメージが湧きますので、異なるとガッカリしてしまうわけです。それから、もう1度買いたいという気持ちにさせることも重要です。ハロー効果を最大限にするために、こういったことを考え成功している会社様の事例をご紹介いたします。
“手渡し”のような配送で信頼獲得!ていねい通販「すっぽん小町」
リピート通販であれば、顧客別、ステータス別に細やかな対応をしていく、トライアルのときには初回の挨拶、本品購入であれば本品購入のお礼があり、定期であれば毎度ありがとうございますと、毎回異なります。なかには誕生月にサプライズのプレゼントを入れる通販会社もあります。
こちら、大阪のていねい通販様という会社で、「すっぽん小町」というサプリメントで売り上げが伸びている会社なのですが、もともと生活総合という社名でした。生活用品を売っていたのですが商品が変わり、ブランディングを変えなければならないとなりました。そのときにコンセントが手渡すように届けたい、というものになりました。2007年からこのブランドのイメージ戦略が始まります。ここから3年間、広告をあまり打ちませんでした。なぜかというと、本当に手渡すように届けられているか確認していたからです。同時にインフォマーシャルでABテストを行い、一番LTVが良いものを作り上げていったのです。
特に健康食品で、パウチ3袋に対し大きなダンボールで届いたら安っぽいですよね。なので、通販の場合、パッケージまで含めて商品です、とお伝えしています。ここを開けると、いつもご注文いただきありがとうございます、とパッケージに書かれているんです。ここも見てください。いつも大切に届けていただき、ありがとうございます、と書かれています。これはお客様ではなくドライバーさんに伝えている言葉です。ここまでしっかりドライバーさん届けてね、という気持ちをここで訴えているわけです。
ポスト投函も行なっているのですが、ポストに入らない場合は手渡しでお願いします、と書かれています。しっかりドライバーさんに伝えお客様に誠意を見せているんです。
ダンボールの中に髪の毛入っていたらすごく印象悪くなりますよね。クレームになります。そのために全員きちんと、倉庫内の作業の方は帽子を被ることが徹底されています。
1件/60万件!驚異的に誤送が少ないスクロール物流センターの秘密
物流センターって行ってみないとわからないと思いますので写真をお見せします。
倉庫の中の撮影スタジオです。商品が倉庫に届くと倉庫で撮影し、サイズを測ってデータをつくり、さらにコピーライティングを加えて、楽天、Amazon、yahooにアップまでしています。ショップ側は何もしなくても販売開始しているんです。モールに溜まった注文もスクロール360が処理していきます。出荷を指示したらキャンセルが入ってしまった場合でも、コンタクトセンターから出荷を止められますので、いちいち通販会社経由しなくても大丈夫です。
後払いがありますので、払わないお客様の分も安心してお金が入ってきます。この処理もすべて繋がって行なっています。コンビニでの受け取りも可能でして、出荷センターから直接ファミリーマートへ届くシステムをスタートさせています。Tシャツ屋さんの事例ですが、100人注文し、20人がコンビニ払いです。さらに代引きもできます。コンビニ受け取りの56%がその場で払っています。特に一人暮らしの女性はドライバーさんが夜に家に来るのって不安ですよね。コンビニであれば、自分の好きなタイミングで支払えるので安心という気持ちからこの数字が出ているのだと思います。
お客様の数でいいますと100社、毎日4万件発送しています。今2万坪ほど使っておりまして、来年きはつくばみらい市に9000坪の倉庫を取っております。後ほどお話いたしますが、将来的には分けて発送する、分散出荷というものも考えおります。
これがうちの検品用テーブルです。まず出荷用の伝票番号を見ます。その後商品の番号を読みます。確かに正しいと商品が出るので誤送がありません。
作業が終わったあとの風景ですが、ゴミ箱は全部空にして通路向きに置いています。監督者が通るだけで異常がないかすぐ発見できるようになっています。倉庫の5Sがしっかり守られています。
もう1つうちの倉庫でお伝えしたいのが、後工程に思いやり、ということをしています。明日入る人が、これもあれもない、ということがないように、すぐに仕事に入ってもらえるように、すべて揃えてから退社してもらうようにしています。
出荷数を予測/運賃量のコントロールでコストダウンに成功
ここの倉庫を出荷しているクライアント様なのですが、多いところは予測数を入れています。ここやばいぞ、忙しくなるぞ、と考えたときに他の作業員をそこにアテンドし、出荷がすべて完了するように調整することが可能です。
それから商品のSKUが少ないのに出荷量が多い場合は、出荷場を多拠点化するという方法があります。例えば北海道のお客様であれば札幌の出荷場から出荷します。 関東から出荷するより200円ほど安くなります。1万件になると月に200万円の差が出てきます。今後も運賃の値上げが予測されますので多拠点化は重要な施策となります。
非常に物流が重要だと私は訴えてきたのですが、2015年に『ネット通販は「物流」が決め手!』という本を発売しました。発売した1週間後に、アマゾンのビジネス・経営・ITカテゴリーで1位になりました。
中国でも出版してほしいという要望があり、中国でも出版しています。もう既に1万部くらい売れております。ぜひご覧いただければと思います。