
「今からでも間に合う」 中国巨大市場攻略のためのマーケティング戦略
船井総研ロジ株式会社
グローバルSCM室 室長
中野 好純
P&Gを経て株式会社船井総合研究所へ入社。船井総研時代は、海外事業戦略策定プロジェクト、日本企業の中国進出、国内外の市場にむけたマーケティング実務支援を行う。2012年に、船井流経営メソッドを武器に中国企業にコンサルティングする事業として、船井(上海)商務信息咨詢有限公司を創業。2020年に帰国し、船井総研ロジ株式会社に転籍。
現在は、船井上海時代のネットワークを活かし、ロジスティクスとマーケティングを融合した世界にむけて日本商品を「爆売り」するビジネスをプロデュースしている。
著書:中国市場で日本の商品を「高く売る」ためのマーケティング戦略(総合法令出版社刊)
急成長を遂げる中国EC市場。コロナ禍やW11の売上など多くの注目を浴び続けています。このセミナー記事では、リアルな中国市場、W11の売上レポート、日本企業が中国越境ECで販売するメリットや越境ECでの成功・失敗事例とともに、これからどのように中国EC市場で攻めるべきかのノウハウをご紹介いたします。
目次[非表示]
- 1.自己紹介
- 2.会社概要
- 2.1.船井総研ロジの三極戦略
- 3.ここまで成長した中国巨大市場
- 4.コロナ禍の今、中国巨大市場で業績回復を狙え
- 5.いまからでも間に合う、中国越境ダイレクト販売のメリット
- 5.1.数字で見る中国EC市場
- 5.2.全世界の越境EC市場
- 5.3.中国市場の越境EC
- 5.4.求められる良質な日本商品
- 5.5.越境ECの3大プラットフォーム
- 6.中国市場で成功する会社、失敗する会社 ~事例紹介~
- 6.1.中国市場で失敗する会社
- 6.2.中国市場で成功する会社
- 6.3.ライブコマースという時流適合マーケティング
- 7.中国販売をする上で気を付けたい落とし穴4つ
自己紹介
会社概要
船井総研では、経営に関するすべてのことを解決できる体制を目指しておりますが、その中でも船井総研ロジは物流に特化しております。以前私は中国に8年間住んでおり、かなり多くの中国企業様とネットワークを構築させていただきました。このネットワークと、船井総合時代から培ってきたマーケティングのノウハウ、船井総研ロジが創業以来積み重ねているロジスティクスのノウハウを融合し、ソリューションを越境ビジネスの中で展開したいと強く願っております。
船井総研ロジの三極戦略
船井総研ロジが目指すのは、中国、日本、ASEANの三極体制です。船井総研グループは東京と大阪に拠点を持ちながら日本を軸に展開しております。さらに、8年前に私が船井上海を創業し、ASEANには船井総研ロジとしてのネットワークをシンガポールにまで拡大しております。この三極体制で物流及び販路を全面的にサポートできる状態を目指しております。
ここまで成長した中国巨大市場
約2週間前、中国では前代未聞の数字が発表されました。独身の日は国民的なECの大イベントで、昨年11月11日の独身の日にアリババは約4兆2000億円を売り上げましたが、なんと今年はスタートして30分程度しか経っていないにも関わらず、売上が5兆9000億円に達ったと報道されました。
中国全国の方が徹夜になるとも言われるイベントで、カートに入れたものを1日付が変わった瞬間に一気に決済していくため、すさまじいスタートダッシュが起きています。この日の終了時には、なんと過去最高売上の7兆9000億円に至りました。
Amazonジャパンの1年間の売上が1兆7425億円というデータが出ておりますので、その5倍の数字を1日で売り上げてしまう中国の勢いがいかに凄まじいかが、おわかりかと思います。
私が中国にいた8年間にECがどんどん拡大しており、店ではあまり商品を買わなくなっています。このことから、現在の中国EC市場でもこの状態がまだまだ続いているといえるでしょう。
コロナ禍の今、中国巨大市場で業績回復を狙え
アリババ独立の日の売上推移を示したのが上記の画像です。昨年までは昨対130%推移で進んでいましたが、今年は186%と2倍近い数字を出しています。今年前半は中国も日本同様にコロナの影響を大きく受けたため消費の動きが悪く、この独身の日に一気にお財布の紐が緩んだと考えられます。
今年の独身の日も多くの日本ブランドが躍進しています。特にライブコマース経由で6割を販売しており、今年は特にこのライブコマースという販売方法がイベントに合致したと感じています。ライブコマースの販促を行うライバーも活躍しており、中国で非常に有名な薇姫(Viya)さんというカリスマライバーもコロナ禍前は来日予定でした。この薇姫さんのライブコマースですが、独立の日0時にも関わらず、6651万人に視聴されています。もう一人、李佳埼(Austin)さんがいるのですが、この方も独立の日0時に5431万人がライブコマースを視聴しているとのデータが出ています。
中国政府自体も越境ビジネスの取組に積極的です。2020年11月に上海国際輸出博覧会というものがあるのですが、世界中から40万人のバイヤーが集まり商談を進めています。世界から2778社が参加し、そのうち日本企業は約270社とのデータが出ています。5日間開催をしていたのですが、この博覧会だけでも約8兆円の売上を上げています。
大企業だけでなく中小企業も多く、日本からも過去最大の出店数があり、食品・農産品、医療機器・医療保健、消費財がメインとなり、中国への高い注目度が伺えます。
いまからでも間に合う、中国越境ダイレクト販売のメリット
数字で見る中国EC市場
上記の画像は、中国全体のEC市場規模を示しています。グラフの単位も万億元ですので、いかにその数字が大きいかがおわかりかと思います。
全世界の越境EC市場
今回特にお伝えしたいのが、日本にいながら中国のモールやチャネルを利用し、13億人の巨大市場に商品を売っていく方法です。他国からダイレクトに販売することを越境ECといいます。上記の画像のようにEC全体の市場よりも越境ECの市場が伸びており、毎年約30%の伸び率で推移しています。今年のデータはまだ出ておりませんが、コロナの影響があった分、大きく伸びると予測しております。
中国市場の越境EC
上記グラフをご覧ください。注目すべきは右側のグラフです。最も輸入している国は日本となり、20.8%のシェアを獲得しています。クロスボーダーで見ても日本からの輸入が最も多い点にぜひ着目いただければと思います。
2020年はコロナの影響でインバウンドが急失速をしておりますが、2015年以降中国本土から来ていた中国人観光客が、現在の越境ECを支えているアクティブなユーザーに変わっています。
求められる良質な日本商品
越境ビジネスで求められている商品は大きく3つに分けられます。①化粧品、②食品、③マンガ・アニメです。さまざまなチャネルがありますので、最もマッチしたECサイトで販売するのが良いでしょう。
日本の商品を選ぶ理由として7割のユーザーが品質の良さを挙げています。このあたりは皆様も普段から感じられているのではと思います。
越境ECの3大プラットフォーム
中国の越境ECでは3大プラットフォームが挙げられ、2つの企業が運営しております。最もシェアが大きいのがKaola.com(考拉海購)とTmall(天猫国際)でアリババグループが運営しております。グラフ左下のJD Worldwide(京東国際)はアリババのライバルでもあるJDグループが運営しております。グラフの1/3はどんどん新しいチャネルが登場しており、日本でも注目を浴びている動画配信サイトRED(小紅書)も越境ECのプラットフォームを持っています。
実際にどのような商品が売れているのかを見ていきましょう。
Kaola.com(考拉海購)の検索エンジンに「日本」と入力しますと、多くの化粧品がヒットします。化粧品は日本輸入品を買うという文化が出来上がっているのを感じられると思います。国内の超有名ブランドではなくても、越境ECのスター商品がたくさん出ている状態です。食品も同様で、中小企業メーカーも戦略によってはスター商品になることができます。
今年の特徴として、インバウンド消費が減退したこともあり、観光客がお土産で買う商品も越境ECで非常に波に乗ってきております。
中国市場で成功する会社、失敗する会社 ~事例紹介~
中国市場で失敗する会社
以前私がコンサルティングをさせていただいた経験から、中国市場で失敗しやすい会社の事例をご紹介いたしましょう。
失敗要因は下記画像の4つです。
4点目の補足ですが、以前美白を打ち出した化粧品会社様がいらっしゃったのですが、中国市場では日本ほど美白のニーズがなく、リサーチ不足にて失敗したケースがあります。
中国市場で成功する会社
我々のコンサルから成功した事例から、いくつか成功する会社のポイント5つをご紹介しましょう。
上記画像の補足ですが、1つ目のようにEC販売に特化すると市場で目立ちますので、リアル店舗から声が掛かるなどのケースもございます。
以前中国で私が実際に消費者インタビューを進めて爆売りが躍進した事例がございます。ある化粧品で消費者インタビューを行っていますと、日本と比べて高いのか気にしているとの声が多く聞かれました。テストマーケティングで1日だけ日本のレートに合わせて販売した結果、たった1日で前月の6倍の成果が出たケースがございます。ポイント3つ目のように価格設定がどれだけ大切かがわかるかと思います。
ライブコマースという時流適合マーケティング
中国では日本のEC市場の一歩先を進んでおり、ネット販売からライブコマースが主流になっています。これは、まさにスマホの普及率と比例しており、中国では7億万台のスマホが使用されているためECに最適な社会環境が出来上がっています。月に1回以上ライブコマースで購入されております。最大のポイントは、ライブコマースで購入されている商品は越境で人気の商品と類似している点でしょう。越境ECにライブコマースを合わせるのが、まさに今ベストなソリューションです。
中国販売をする上で気を付けたい落とし穴4つ
まとめとして、中国販売をする上で気を付けたい落とし穴4つをご紹介します。
越境ECは人脈がすべてではありませんので、チャネル、売り方、マーケティング戦略を適切に選ぶ必要があります。また、ECで爆売りの成功を収めるには物流に強い企業も重要です。
上記の補足ですが、マーケティングリサーチを軽視しないでいただきたいです。消費者の声に耳を傾ければ爆売りのヒントが見つかるはずです。また、日本で売れているから中国で売れるというわけではありませんので、中国で売れる物を見極めましょう。
とりあえず置いてみるという売り方はNGです。中国の時流に乗ったライブコマースという売り方をぜひ活用していただけると良いかと思います。
EC事業は実は事業計画が非常に立てやすいです。投資のほとんどが広告となり、広告でどれだけ投資し何年で回収するのかが大切です。ポイント3つ目のように、向こう3年で得られるプロフィットを考え検証していくことが大事です。最終目的は爆売りですので、現地法人か中国の代理店選定を視野に入れておきましょう。
短い時間でのセミナーでしたので、もっと聞きたいとお考えの方はぜひお気軽にお声掛け、ご質問ください。本日はご清聴ありがとうございました。