
【第三部】脱ハンコ・FAX!受発注×請求のデジタル化はこうすればできる ~BtoB-ECの進め方のコツ・事例~ 第三部:BtoB-ECの事例とコツ
株式会社ネットショップ支援室
取締役 事業統括部長
山本皓一朗
マネーフォワードケッサイ株式会社
決済事業部
シニアマネージャー
岡本創
「受発注×請求のデジタル化」をテーマに行われたネットショップ支援室×マネーフォワードケッサイのタイアップ特別セミナー。第三部では、Eコマース化事例、売上が伸びるポイント、社内稟議の通し方まで詳しくご紹介いたします。
目次[非表示]
BroB-ECの事例とコツ
岡本:システムについてですが自社でつくる、BtoCを転用するなどの方法があります。1つ目にシステムの選び方のコツ、2つ目に、業務効率化だけでなく売上が伸びる事例とコツ、3つ目に社内の合意形成のコツについて触れていきたいと思います。
まず、システムの選び方です。「いくらくらい掛かるのですか?」と皆様によく聞かれます。標準機能はもちろん、価格表示の有無、掛け率などのBtoB特殊機能(全業種共通)、長さや体積などのBtoB特殊機能(業界特有)など、どこまで追求するかで価格が変わってきます。
SaaS:ノンカスタマイズに位置する『楽楽B2B』を使用すると初期費用は10万円、サイト構築を含めてミニマム50万からとなり、100万未満で立ち上げることも可能です。カスタマイズを含めてもミニマム300万くらいで構築できる目安となります。
SaaSとパッケージの違いは、サーバーが含まれているかどうかです。『楽楽B2B』とSaaS、パッケージ:カスタマイズを比べると1桁数字が変わってくるのがわかります。
フルスクラッチでつくった場合、5000万円以上とかなり高くなり、構築する時間も掛かります。始めるならスモールサイズでスタートするのをおすすめします。
大切なのは、このシステムの値段ではなく、売上対比でシステム予算をどう捉えるかです。平均的な数字で予算の1~3%と言われています。売上が1000万円の場合は20~30万円、減価償却で捉えれば5年間で100~150万円が初期で使用できる範囲です。1000万円の売上を目指すのであれば、『楽楽B2B』を含めたSaaS:ノンカスタマイズ、それ以上を目指すのであれば、パッケージ:カスタマイズやSaaS:カスタマイズが目安と考えられます。そのぐらいの予算は投下しなければならないと捉えていただければと思います。
システムを選ぶもう1つのコツは、「顧客」「商材」「業務」の一部からスタートするのか、全部やるのかです。全部行うよりは一部から始めるのがおすすめです。
Eコマース化事例
岡本:私のお客様の事例をご紹介します。
業務のプロセス全体を捉え、顧客対応とプロセスのどこからEコマース化していくかを話し合い、絞ってスタートすることにしました。売上が10億円、取引社数は3000社ほどあるのですが、いきなりすべてをEコマース化するのは大変ですので、10万点ある商材のなかで倉庫内にある食品(全体の9%)から始めました。顧客についても3000社のうち20社から始め、上手くいくようになってから150社というように段階的に6割に引き上げていきました。
このように段階的にEコマース化にしていくことを考えると、システムの予算も変わってきます。最初はスモールスタートで十分で、やれるところから始めることを強くおすすめします。
ECシステムを選ぶ観点とコツ
岡本:システムを入れることが目的になってしまう方が多いのですが、システムを入れて終わりではありません。売上、粗利のアップ、業務効率化、顧客満足度を高めることが本質のため、システムは道具の1つであると捉えていただければと思います。
システムを導入しながら業務プロセス、ECに特化した組織体制、ECに向いた商品のセットなどを考え、EC体験を始めてつくることができます。システムに投資したから大丈夫ではなく、全体を考える必要があります。
また、全部外注するとお互いが責めあう雰囲気になりやすいため、必ず社内には全体の設計ができる方を社内に置くことをおすすめします。
さらに、パートナー様を選ぶコツにも触れていきます。旧来型のシステム会社に多いのですが、「それはできません」で始まる方が多いです。よく聞くと話す主語は「私が」になっています。一方、良い企業ですと「御社にとって」が6~7割になっている方が多く、主語の割合もしっかりチェックしていただくと良いです。
卸取引にも変革の波が来ている
山本:BtoBをECで行うにあたり、皆様がイメージすることは業務効率化が多いのではないかと思います。しかし、本質的には売上を伸ばすことが大事だと考えています。
ご支援させていただいている企業で売上・利益が伸びている企業が考えていることは、①買い手側の利便性の追求、②売り手側の業務効率化です。
また、売上を伸ばす方法は、上記の①取引社数の増加、②取引金額の増加の2つです。
次に、売上の公式についてです。売上の公式は、取引先を増やす、購入金額を増やす、購入頻度を増やす、の3つと考えられていますが、それぞれに課題があります。取引先を増やすにも営業リソースが必要、営業リソースが少ないため小口企業のフォローまで行き届かない、適切なタイミングのアプローチができていないなどが挙げられます。
買い手側としては毎回FAXで注文、電話で毎回確認をしている企業よりもWEBで行える企業の方が、圧倒的に利便性が高いです。売上・利益を伸ばすためにはWEB化は不可避です。
売上が伸びるポイント10
山本:①~④については第二部でも触れさせていただきましたが、特に注目していただきたい点をいくつかピックアップしてご説明をしましょう。
⑤「商品情報が詳しくわかる」についてですが、化粧品の卸会社様では、使い方の動画を載せることで、エンドユーザー様に向けて説明しやすくなったとの事例もあります。
また、⑥「メルマガ・キャンペーン」についても取引先全体にメールでキャンペーン告知ができますので、営業工数の削減に役立ちます。
⑧「各種掛け払い」についてですが、新規顧客様に対してマネーフォワードケッサイ様を含めた各種掛け払いを選べ、未回収リスクが少ないのも安心です。
WEB化の全体像、業務フロー改善例
山本:業務フローの改善例をご紹介します。まず、WEB化にすることでWEB注文が受けることができ、WEB化にまだしていない既存顧客についてもFAX注文内容を『楽楽B2B』で一旦打ち込みことによりWEB上で発送内容を確認できるようになり、少しずつWEB化を進めることができます。「WEBって便利だな」と思っていただけるように誘導していただくと、売上の公式のように購入頻度のアップ、単価アップにつながりやすくなります。
岡本:発送処理の書類の中にECサイトのQRコードを付けておくことで、少しずつWEB注文に寄せていく事例もありますよね。
山本:そうなんです。同梱やサンプルを含めて営業、EC化していくと良いですね。業務効率化はもちろんですが、3年後、5年後を考えて同業他社と比べて先にWEB化を行う重要性もあります。
今後の卸営業展開方法はこうなる
山本:WEBで新規の取引先を増やす際に、SFA(salesforce、Hubspotなどの営業支援ツール)を入れることで、A社がサイトページだけでなく動画を見ているからすぐに営業をしよう、B社は特設サイトをあまり見ていないから別の商品を提案しよう、Z社特設サイトに気が付いていないからメールしよう、などの行動履歴から営業ができるようになります。ここまで進めれば、卸営業のDX化を一気に進められると考えております。
岡本:注文が多い時間を調べるとお昼休みが多かったり、飲食店ですと店を開ける前だったりが多いため、その30分前にメルマガをお送りしておくと開封率が上がるなどの戦略が立てやすくなりますよね。可視化できるのがEコマース化の良さです。
社内稟議の通し方、合意形成
岡本:社内稟議の悩みとしてよく伺うのが、上記画像の4点です。1つ目の「やり方がわからない」については、皆様の社内のキーマンを呼び、チーム全体で2時間くらい会議を行っていただきます。その中で簡易デモを触っていただき、業務フローの中でEコマースがどのように役立っているのかを体験していただくと「あれ、すごく便利なんじゃない?」という意見が多数出て来ます。導入前か導入が決まった最初の1~2週間でロールプレイをすることで社内を巻き込むことができます。
2つ目の「効果」についての疑問には、業務効率化、売上アップの2つを話していただきます。
上記はある企業様で、実際に稟議で使用された資料なのです。1注文単価と原価の構造を見た際に粗利の%を示します。日経新聞のデータで、1回のFAX注文で掛かるコストは平均800円、請求にも平均650円掛かっているというデータがございますので、1注文1100円以上掛かっています。そこで、受発注からEC化を進めることで粗利が増えると話してみてください。
売上アップについてですが、カタログで売っていたものをECサイトにすると「ついで買い」「まとめ買い」が増えるため、年率5~15%ほど注文単価が上がっています。売上アップを狙いとしてお話いただければ、ご納得いただきやすいです。
プロセス全体を変える際などは、『楽楽B2B』、『マネーフォワード ケッサイ』の導入を営業全体の流れを捉え説明することをおすすめします。システムを入れることでこのようなメリットがありますよとお伝えいただくと、流れが可視化できるため納得いただきやすくなります。ロジカルに話すことがポイントです。
あまりロジカルな説明で納得いただけなさそうな上司の場合は、情熱で伝えてください。家族経営されている企業なのですが、おばあちゃんがずっと複合機前に貼り付けで仕事をしていたのですが、導入後は大好きな羽生結弦選手のフィギュアスケートを見ることができた…という事例がございます(笑)。
導入することで、仕事、生活の時間の使い方が変わります。例えば、スマホができてから大幅な時短ができているかと思います。そのように捉えていただければ嬉しいですね。
あとは、事例を活用しましょう。他社が実際に導入しているのを見ると揺さぶられるものです。事例をお見せしながら、お話するのがおすすめですね。
セミナーは以上となります。では、質疑応答に入ります。
【質疑応答】
Q:どれくらいでオープンできますか?
A(山本):簡単なフォームであれば1週間で作成可能です。しっかりサイトをつくる場合は1~2か月はいただいております。
商品点数が多い場合、1点の登録に20分程度掛かります。1000商品あれば4万分掛かります。ECサイトで作ったデータを基幹と連携させるところで戸惑う方が多く、商品、注文データの登録が基幹システムと『楽楽B2B』で合っているのかを確認するのが、意外とクリティカルパスになることが多いですね。このあたりをクリアできれば、3か月程度で構築できると感じています。
本日はご清聴いただき、ありがとうございます。もし、事例やご相談がございましたら、気兼ねなくお声がけください。