
「物流業者の視点から見る、これからの越境ECで攻めるべき国とは?~当社事例から学ぶ海外進出成功のカギ~」
株式会社ECMSジャパン
平野大地
1993年生まれ埼玉県出身。
人材紹介会社の新規営業を経て、2018年ECMSジャパンのカスタマーサービス課へ入社。通関や貨物配送の問い合わせ対応を行った後、昨年営業課へ異動。現場の実情をお話しながら新規顧客獲得に従事している。
越境EC市場が毎年拡大していく中で、海外進出に乗り出す日本のEC事業者は今や珍しくありません。
国内ECに慣れている事業者でもなかなか一筋縄ではいかないのが越境EC市場。
創業から一貫して越境EC特化の物流サービスを行ってきた当社ならではの視点から、通関事情や消費者のニーズを踏まえ、今、越境EC進出にお勧めの国をピックアップしてみました。
これから海外進出を検討されている方、既に進出しているが問題を抱えている方、などなど、リアルな物流事情を求めている方向けにお話いたします。
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会社概要
ECMSグループは2013年に中国に設立された国際宅配便の物流業者です。母体である中国、日本、香港、韓国、ヨーロッパ、アメリカと世界に法人がございます。弊社の『B2Cダイレクト』は越境ECに特化したサービスでして、各国のコンプライアンスに合わせながら格安で海外の消費者へお届けすることができます。
日本法人ECMSジャパンとしては2016年に設立しており、5年目のまだまだ若い会社です。
2019年に貨物の取り扱い件数がグループで1000万件を突破し、これから増々伸ばしていこうと全社で努めております。
越境ECに特化した直送サービス『B2Cダイレクト』
『B2Cダイレクト』をもう少し詳しく見ていきましょう。『B2Cダイレクト』は越境ECに特化したB2Cの直送サービスです。日本から一回現地の倉庫を挟んでお客様に配達ではなく、個人の消費者様まで直接の配達を行います。通常の国際宅配便と同じように日本の企業様から荷物をお受けし、海外の個人のドアまでお届けします。
日本のクライアント様から段ボールでお荷物をいただき、ECMSの日本倉庫で航空機用のコンテナや、パレットで集合梱包を行った後に、日本の空港へと運んでいきます。航空便を通して現地へ輸送し、ECMSの現地側で荷物を受け、輸入通関を進めます。通関を終えたものから順次、個人消費者のご自宅まで配送をしていきます。
国際宅配便を行う業者は複数ありますが、立ち位置の違いをご説明します。クーリエ業者はスピードが早いです。日本から荷物を出して明日、明後日には地球の裏側に着いてしまうサービスを提供されておりますが、その分輸送費用が高くなります。得意領域としては、B2Bの緊急輸送となるかと思います。
郵便にEMSというサービスがありますが、こちらはスピードについてはクーリエ業者ほど速くはないです。しかしその分輸送費用も抑えられるというメリットがあり、B2CやC2Cに得意領域を持っておられます。
弊社もスピードは郵便と変わりません。およそ1週間程度のお時間をいただきますが、輸送費用を郵便よりさらに格安でご提供し、B2C、とりわけ越境ECに特化したサービスを展開しております。こういった点から弊社では自分自身のことを「物流業界におけるLCC」と呼んでおります。
越境ECを利用する個人消費者の意識とは?
ここで質問です。なぜ個人の消費者が越境ECで商品を購入するのでしょうか。
Paypal社の調査で、海外サイトで購入経験がある人を対象に「なぜ海外のサイトで商品を購入しようと思ったのですか」という質問がありましたので、結果を見ていきたいと思います。
1位が同率になっており、「送料を含めた支払い総額が安かったから」「送料が無料だったから」と答えています。3位は「決済方法が安全だったから」、4位が「国内で手に入らない商品だったから」、5位が「自国の通貨で価格が見られたから」と続いています。
見ておわかりの通り、同率1位の答えが両方とも価格、とりわけ送料に関する項目になっています。海外の消費者の方が海外サイトから購入する際、送料を気にされているのがわかります。こういった消費者のニーズを踏まえて、越境ECに特化した物流サービスを行うECMSでは送料を一番に考え、サービスの構築しております。
気になる越境ECの送料
越境ECの送料についてもう少し詳しく説明いたします。
越境ECの送料には、航空運賃、通貨の諸掛り費用、国内送料等が含まれます。
航空運賃は距離とフライトの数に関係します。距離が近ければ近いほど、また、弊社は航空会社様から航空機のスペースを借りて輸送しておりますので、フライトの数が多ければ多いほど、一般的には安くなります。
また、通関は一般貿易とは異なり個人輸入(簡易通関)を前提としています。一般貿易のご経験のある方はご存知かと思いますが、取引には現地側輸入ライセンスの取得や、インボイスやパッキングリストの準備等が必要となります。
それに対して個人輸入では、販売目的でない、個人で使用する範囲内に限り、優遇された制度が各国設けられております。越境ECではこれを前提として輸送しています。
個人輸入と一般貿易の違い
先ほど申し上げた通り、一般貿易よりも優遇された制度として、各国個人輸入の制度が設けられています。
細かいルールは各国異なっておりますが、この個人輸入(簡易通関)の通しやすさというのが越境EC進出国を選ぶ基準として、とても重要な要素になります。個人輸入(簡易通関)が認められる範囲が狭ければ狭いほど販売できる商品のカテゴリー、個数に制限がかかってきます。つまり、この幅が広ければ広いほど、越境ECとして販売しやすくなるということです。
EC事業者が注目する国、地域
次にEC事業者が注目している国や地域についてお話いたします。JETROがEC事業者を対象に行った調査では、「今後、海外で販売拡大を図る、新規販売を検討する国は?」という質問に対し、。2018年の回答では2016年と比べ、中国、台湾、香港の数字が伸び、販売を検討している企業が増加しているという結果が出ています。そこで、中国、台湾、香港にフォーカスし、詳しく見ていきましょう。
中国は原則として個人での輸入貿易が認められていません。ただし、越境ECの場合、商業目的ではない個人使用の物品である、ということを前提に輸入通関を行うことが可能です。つまり、自分自身で使い、販売目的でない場合であれば、個人の輸入通関ができるということです。オークションで売りさばくような行為はNGとなります。
注目の国、地域1 中国
編集後記)このパートでは、中国越境ECの2種類の通関の特徴やそれぞれのメリット、これから参入するにあたって注意すべき点などをお話しておりました。ECMS様は中国に母体があることもあって、かなり現地の制度に精通しておられる印象を受けました。
中国向け事例 WeChatの公式アカウントを活用
編集後記)このパートでは、中国版LINEとも言われるSNSツール“Wechat”を利用して越境ECを行っているクライアントの事例をお話しておりました。物流業者であるECMS様の視点からの販売ノウハウも併せてお話されておりました。
注目の国、地域2 香港
編集後記)このパートでは、香港へ出荷を行うにあたってEC事業者が気を付けることについてお話されておりました。フリーポートの香港でも、気を付けるべき品目があることが分かりました。
香港向け事例 B2Bに『B2Cダイレクト』を活用
編集後記)このパートでは、ECMS様の輸送サービス『B2Cダイレクト』をB2B出荷で利用しているクライアントの例をお話しておりました。ECMS様の出荷の中でもかなり珍しいパターンのようです。
注目の国、地域3 台湾
編集後記)このパートでは、台湾の通関のカテゴリの説明や、輸入関税のルールについてお話しておりました。中国同様、かなり細かいご説明をしており、輸送時のトラブルを回避しようと努力しているECMS様の姿勢が見て取れました。
台湾向け事例 単品通販に特化し税率計算をクリアに
編集後記)台湾向けに出荷しているクライアントの事例をお話されておりました。日本でもよくある単品通販は台湾の消費者にもニーズがあるようでした。
最後に
編集後記)総括として、3地域の輸入ルールの違いということで、各国の免税になる条件や、禁制品等の関係を踏まえた商品の送りやすさ、総合して越境ECの進出のしやすさを物流業者の視点からお話しておりました。
平野)本日時間の都合上お話できませんでしたが、弊社ではお話した3地域以外に、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、アメリカ向けの輸送も行っております。
また、販売前の商品の在庫保管、梱包サービスも併せて提供をしております。ご興味のある方は是非個別にお問い合わせいただければと思います。
新型コロナの影響で国際便を取り扱っている企業様の中では、一部サービスを取りやめている企業様もいらっしゃいます。弊社もこの混乱の中、一部の地域への配送が遅延しておりますが、可能な限りサービスの提供を続けてまいります。
なかなか明るいニュースが入りにくい現状ではございますが、皆様とご一緒に越境ECを盛り上げていきたいと考えております。本日はご清聴いただき、ありがとうございました。
<お問い合わせ先>
株式会社ECMSジャパン
sales.jp@ecmsglobal.com